過去の経験+αを活かせる農業 (vol.15)

農業カメラマン網野文絵のKnow Life 

 

田村かつ子さん(みなかみ町)

手作り梅を前にお話しをしてくれるかつ子さん

今回は旧新治村(現みなかみ町)生まれの農業女子、田村かつ子さん(58)をご紹介します。

かつ子さんは3人姉妹の次女として生まれ、実家は養蚕や水稲、野菜全般を満遍なく作っていました。「自分で食べるものは自分で作る」まさに自給自足の生活環境で育ちましたが、研究所勤務や裁縫を仕事にする姉や妹とは違い、かつ子さんは、人との触れ合いに興味を持ち、高校卒業後に沼田市のデパートで働きます。しばらくして旦那さんと出会い結婚。出産を機に退職しました。旦那さんは大工をしながら、かつ子さんの実家、田村家の養子に入り家業の農業を支えることを決めますが、かつ子さんは、自分には向かないと就農せず、子育てや家事に励みました。

そんな時、たまたま知り合いから、「生活研究グループ」を勧められました。このグループは全国の農山漁村で生活を営む女性が中心となって経営や生産の知識・技術の情報交換を行うものでしたが、かつ子さんは、そこで様々な人に会うのを楽しみに近くの支部に入会しました。そこでは、机上の勉強というより農業の6次産業化のため、干し梅や味噌など加工食品を作りました。料理好きな上に、持ち前のコミュニケーション力でたくさんの知識と知り合いを増やし、40代で県会長に抜擢され、群馬の代表として全国へ飛び回ることになります。

一度決めたらやり遂げる真っ直ぐな性格。忙しい会長職を全うすべく、家族にも協力してもらい遠くは、青森、茨城、香川の農村見学や農村の人との情報交換をしました。グループの皆さんは、まさに「農業女子」の先駆けといえるでしょう。

かつ子さんは農業・漁業・酪農の現場で女性の活躍を目の当たりにして、「私も農業をしたい」と、約15年前に就農へ舵を切りました。その後は、漬物の営業許可を取得して直売所で梅干しを販売。そしてみなかみ町の体験施設「たくみの里」で自家製大豆の味噌づくり教室もスタート。農業に人が親しみ、楽しさも組み合わさった、かつ子さんらしい仕事になっていきました。

2年前、グループは解散しましたが、かつ子さんは新たに利根沼田の農業女子グループ「TNしありーず」に加入。農家の女性という立場で思いを共有しながら、共同開発した商品をマルシェに出品するなど、精神面、経営面で支え合うグループのメンバーとして活発に活動しています。「これまでの経験がなかったら農業はしていない」 そう言いながら、かつ子さんはこれからも食や農業体験を多くの人に広げていくでしょう。

全国農村を見てきても、やっぱり自分の稲畑が一番好きとのこと

あみのふみえ/フォトグラファー

もともと野菜が苦手だったが、畑で感じた匂いや景色に衝撃を受ける。カメラマンとして農家や畑・作物を撮影するうちに、野菜が好きになる。新しい野菜の“見かた”を発信することがライフワーク。5月中旬に写真絵本「やさいのはな なんのはな?」(岩崎書店)を出版。
■インスタグラム: @amino_fumie
■HP: www.knowlifephotos.com

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