縄文人の美意識感じて
土でできた円形の出土品。「これがなぜ、耳飾りと考えられるのですか?」と展示室の実物を見て不思議に思われる方は多くいらっしゃいます。1989年と90年に実施した発掘調査で、茅野遺跡(縄文時代後期・晩期、約3500年前)から出土した土製耳飾りは577点を数え、そのうちの200点余りを榛東村耳飾り館に常設展示しています。
最大でも直径10センチしかない円の内側に、描かれる文様はさまざま。雲や稲妻、渦や水流、花などにみえるモチーフは自然からの意匠化を連想させるものも多くあります。またワンポイント、左右対称、十字分割、等間隔などの平面構成はバランス良く計算されています。
形状に着目すれば、朝顔型に広がった形は装着時の見栄えが高まる効果を狙い、側面の凹みは耳たぶから落下しにくくする実用的な工夫でしょう。1つの土製耳飾りは小さなものですが、文様の多様さと造形の精巧さ、実用性といった当時の人々の美意識がそこに凝縮されていると感じます。
西に榛名の山容が迫り、眼下に利根川が拓いた平地が広がり、東には赤城山の雄姿を望む。榛名山東麓に立地する榛東村茅野遺跡(国史跡)からの眺望です。茅野遺跡は湧き水のそばに営まれた竪穴式住居が数軒立ち並ぶムラで、人々は岩版や石棒、土偶などを使用した祭祀を行い暮らしていました。
出土品のうち1950点が国の重要文化財に指定されており、耳飾り館に保管されています。当館では土製耳飾り、土器、岩版や石棒などの祭祀関係遺物をはじめとした資料を展示しているほか、茅野遺跡へのご案内もしております。縄文時代の美意識に触れる機会に、また冒頭の問いの答えを探しに、耳飾り館へどうぞお越しください。