2つの突起 何のため? 弥生初めの不思議な石器
沖Ⅱ(おきに)遺跡は北関東西部地域における弥生時代前期末から中期初頭にかけての代表的な遺跡です。遺跡からは27基の土器埋設土壙(再葬墓)が見つかりました。31個体の土器や打製石斧(せきふ)・石鏃(せきぞく)などの出土品は県指定重要文化財となりました。ちなみに再葬とは、遺体を一度埋葬した後、再び土器に納めて埋葬する丁寧な埋葬法。同遺跡から出土した壺形や甕形の大型土器には東北や東海の縄文晩期から弥生前期の特徴がみられ、藤岡地域との文化の接触を伺わせる良好な資料となっています。
出土品の中でも、定型化した「独鈷状石器(どっこじょうせっき)」が注目されます。縄文晩期の「独鈷石」の系統に位置付けられる打製石器です。独鈷石の名称は、両先端が斧や槌状で中央に凹みがある磨製石器で密教法具の「独鈷杵」に形状が似ていることから付けられました。沖II遺跡から出土したのは9点。こうしたまとまった数の出土は全国的にも大変珍しいことです。
多くは藤岡地域の結晶片岩で作られており、大きく二つの形状があります。一つは、直線的で両端が細長く、突起が半円状。もう一つは、幅広くて僅かに反りがあり、左右対称でなく片側が長細くなっていて、突起部分もやや幅広になっているものです。
独鈷状石器は、まだ、どのような用途で使われていたかわかっていません。恐らく2つある突起部分の間に挟むようにして柄がつけられていたと推測します。石をよく観察してみても突起の端や周囲に、つぶれや叩き剥がれ、摩耗のような痕跡がないので、掘ったり叩いたりする道具ではないように思われます。もしかすると実用ではなく、副葬品や祭祀などに使う道具だったのかもしれません。
想像は尽きませんがこの不思議な形の石器について考えを巡らすのも面白いと思います。常設展示室の目立たない場所にある、全国的にも珍しい独鈷状石器。知る人ぞ知る「通」の石器です。一見の価値がありますよ。
■きてみて■
藤岡歴史館/藤岡市白石1291-1/0274-23-5997/午前9時半~午後5時/休館:年末年始/入館無料/12月26日まで企画展「古墳をまもりつたえた人々」開催中