埴輪工房の火災で取り残された家形埴輪
埴輪は通常、据え付けられた古墳から出土しますが、今回紹介する家形埴輪は、埴輪を製作した工房である釜ノ口遺跡(伊勢崎市堀下町)から出土した極めて異例な埴輪です。
一見よく焼かれているようにも見えますが、実際は焼成が不十分で下部がもろい状態です。この埴輪工房は火災に遭っていたとみられることから、粘土で成形したあと窯で焼く前の状態のものが工房で発生した火事によって焼かれ、そこに取り残された、というストーリーが推測されます。家形埴輪の表面に黒く残る痕跡は火事で付着した煤です。他にも、焼けたのは一部だけで大半が粘土の状態の埴輪も見つかっており、当時の火災の状況が垣間見えます。
実は、帝室博物館(現東京国立博物館)による昭和4(1929)年の発掘調査で、この家形埴輪と瓜二つの埴輪が、3㌔離れた赤堀茶臼山古墳(同市赤堀今井町)から出土していたのです。赤堀茶臼山古墳は、古墳時代の5世紀中頃に築造され、家形埴輪が8棟出土した全国的に著名な古墳ですが、瓜二つの家形埴輪の存在は同じ埴輪職人が製作した可能性を示すものです。これは、釜ノ口遺跡が赤堀茶臼山古墳に埴輪を供給した埴輪工房と考えられる大きな発見となりました。
当館では、釜ノ口遺跡の埴輪工房で出土した家形埴輪のほか、赤堀茶臼山古墳出土埴輪を展示しています。約1600年前に埴輪工房で発生した火災により取り残された家形埴輪からうかがえる歴史のストーリーを、ぜひ間近でご覧ください。
■きてみて■
伊勢崎市赤堀歴史民俗資料館/伊勢崎市西久保町二丁目98番地)/ 0270-63-0030/午前9時~午後5時(入館は午後4時半)/入館無料/月曜休館(月曜が祝日の場合は開館し翌日休館)/2月10日~3月21日は季節展「おひなさま」開催