重要文化財「旧群馬県衛生所」(桐生明治館)(Vol.27)

県都・前橋から移築された、本格的な「擬洋風建築」

1976年に国の重要文化財に指定された「桐生明治館」

旧群馬県衛生所は1878(明治11)年に現在の前橋市に建てられました。木造二階建で小屋組みは和風ですが、外観の装飾をもって洋風とする本格的な「擬洋風建築」として国の重要文化財に指定されています。

西洋館なのに瓦屋根、ベランダに直接つながる室内階段など、「洋」と「和」が織り交ぜられた箇所が随所に見られますが、当時の職人が見よう見まねで、しかし確かな技術で造り上げた建造物です。落ち着いた雰囲気の貴賓室や会議室、展示されている明治期のピアノやオルガンなどからは、当時の面影が感じられます。

衛生所は、日本の衛生行政を支えていた公共機関で、創建当初、医学校を併設していました。翌年に衛生所が廃止となり、さらに2年後には医学校も廃校。その後は県立女学校、師範学校付属小学校、物産陳列館、県農会事務所などにも転用されています。昭和に入り、山田郡相生村(現桐生市相生町)が県から払い下げを受け、村役場として現在地に移築しました。ちなみに前橋の跡地に建てられたのが、現在の群馬会館です。

1954(昭和29)年の桐生市との合併後は、相生出張所及び公民館として使用されていましたが、84(同59)年から2年3カ月にわたる保存修理工事で衛生所時代の姿に復旧整備され、「桐生明治館」として一般公開が始まっています。当時は展示等への貸室や市直営の喫茶室など、重要文化財建造物の活用としては全国に先駆けた事例として話題を呼びました。

蓄音機からの音色を聞きながら優雅に飲み物やケーキなどを楽しめますので、ぜひ一度、足を運んでみてください。

桐生市教育委員会文化財保護課
向田 澄枝 さん
むかだ・すみえ/桐生市生まれ。1985年4月から桐生市役所職員。2021年4月より同市教育委員会教育部文化財保護課文化財保護係課長補佐(兼)係長

きてみて
桐生明治館(重要文化財 旧群馬県衛生所)/桐生市相生町二丁目414-6/℡0277-52-3445/月曜休館(祝日の場合翌日)・祝日の翌日・年末年始/観覧料:高校生以上)150円、小・中学生50円 ※新型コロナウイルス感染状況によっては喫茶室休止・休館になる場合あり

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