「生糸(いと)の町前橋」の象徴・現存する貴重な歴史的遺産
この建物は、1912(明治45)年6月11日に前橋市岩神町(現昭和町三丁目の群馬大学医学部西側)に国立原蚕種製造所前橋支所の本館として建てられました。
原蚕種製造所とは、当時日本の重要な産業であった養蚕・製糸業について国が統一的に研究改良を進めるために設けた施設のことです。東京杉並に本所を置き、福島・群馬・長野・愛知・京都・熊本など養蚕製糸業が盛んな地域に支所が設けられました。現在、当時の建物が残っているのは、この「前橋市蚕糸記念館」のみです。
原蚕種製造所は名称を何度か変更しながら、80(昭和55)年1月に茨城県筑波研究学園都市の農林水産省蚕糸試験場に統合され、翌年、前橋市が国から払い払い下げを受け解体、現在の敷島公園ばら園に移築したものです。
本建物の特徴は、当時の日本の大工が西洋建築のデザインを模倣して建てた洋風建築といえます。構造は当時の日本家屋と同じ和小屋が用いられており、玄関正面屋根上の塔屋、玄関ポーチの中央部に膨らみを持った角柱、上下開閉の縦長の窓、屋根に付く避雷針状突起、横目地下見板張(よこめじしたみいたばり)(ドイツ下見)の外壁、屋根妻側の明かり取りなど西洋建築の要素がみてとれます。
現在館内には、原蚕種製造所時代に使われていた用具や前橋市内で実際に使われてきた養蚕、製糸関連資料を展示公開しています。その多くが「前橋の養蚕・製糸用具及び関連資料」として国登録有形民俗文化財に登録されています。
この時期、咲き誇るバラの花と共に、かつて日本の華と讃えられた前橋の養蚕・製糸業の歴史を堪能してはいかがでしょうか。
■きてみて■
前橋市蚕糸記念館/前橋市敷島町262(敷島公園門倉テクノばら園内)/開館日:4~11月の土日祝日とばら園まつり期間中(2022年春は5/14~6/5、秋は10/22~11/6の予定)/午前9時~午後4時/入館無料
【イベント】①蚕糸記念館で「座繰り体験・桑の木クラフト」(指導者:富岡製糸場世界遺産伝道師協会)=5/22と29午前10時~②敷島公園緑化相談所で「まゆクラフト」(指導者:県都蚕糸会)=5/22午前10時※参加無料、当日現地へ直接。問い合わせは文化財保護課(027-280-6511)へ