天平美人に会いに来て!
前橋市総社町総社の「前橋市総社歴史資料館」から車で5分ほどの場所に、「山王廃寺」という国史跡の寺院跡があります。これまでの調査から、一辺が80mほどの回廊で囲まれた、7世紀後半創建の白鳳寺院であったことが分かりました。山王廃寺は、東国でも最古級の本格的な寺院の一つで、大和朝廷と強いつながりを持った豪族によって造られたと考えられ、特別史跡・山上碑(高崎市)に刻まれた「放光寺」と推定されます。
1959(昭和34)年、山王廃寺付近の畑から塑像の女性像が見つかりました。長い髪を複雑に巻き上げた女性の頭部の小像(女性像A)です。塑像は土で造り、乾燥させて彩色した仏像です。
この発見から約40年後、寺院の南西の場所で多量の塑像が出土しました。この調査でも女性像の頭部(女性像B)が出土しており、女性像Aとよく似た顔立ちをしています。
どちらの女性像も、奈良県高松塚古墳の壁画に描かれた「飛鳥美人」を思わせるやさしい顔立ちですが、髪の巻き上げ方のみ左右逆で、もともと一対で置かれていたのかもしれません。本来、法隆寺五重塔初層と同様に、様々な像を配置して、釈迦の生涯をジオラマのようにあらわした「塔本塑像」であったと考えられます。
山王廃寺の塑像は、きわめて高い技術をもった造りで、中央から派遣された仏師の手によるものと考えられ、国内を代表する8世紀前半の塑像群です。女性像Aを含め、これまで出土したすべての塑像が群馬県の重要文化財に指定されています。当館では、女性像Bのほか神将像や菩薩像、イノシシやラクダといった動物像まで、50点ほどを展示しています。
ぜひ、資料館や山王廃寺跡に足を運んで、塔がそびえ立ち、僧侶たちが行き交っていた往時に思いをはせてください。