国指定重要文化財 旧中島家住宅(中島知久平邸)(vol.31)

知久平が両親のために建てた 豪華な近代和風建築

玄関にあたる車寄せ

旧中島家住宅は1930(昭和5)年に現在の太田市に建てられました。中島飛行機製作所(現株式会社SUBARU)の創設者である中島知久平が両親のために生家の近くに築いた大規模邸宅です。

築地塀に囲まれた約1万㎡の広大な敷地に主屋、正門、門衛所、土蔵、氏神社があり、主屋の南側には3千㎡にのぼる平坦な庭が広がります。主屋は公的な車寄部・客室部、私的な居間部・食堂部の四棟からなり、中庭を囲むように「ロ」の字形に配置されています。寺社建築を思わせる重厚な車寄は玄関にあたり、四方柾(四面とも柾目)の柱や、国会議事堂にも使われている茨城県笠間産の花崗岩「稲田石」の一枚石できた階段など、上質な素材を惜しげもなく使用していることがわかります。続く広間や応接室には豪奢なシャンデリアやステンドグラス。大理石製の暖炉には当時としては最先端の電気ストーブが備え付けられています。工事費は当時の100万円。大阪城の天守閣の建造に47万円だったと言われることから、いかに豪華な邸宅として建てられたかがわかります。

意匠、構造、素材が優秀なものとして、2016(平成28)年7月に国の重要文化財に指定されました。現在は中島知久平邸地域交流センターとして、車寄部(広間と応接室)を一般公開しています。最高の技術と意匠を体験できますのでぜひ足を運んでみてください。

 

応接室にはシャンデリアやステンドグラスのほか、電気ストーブを設置した大理石の暖炉などが備え付けられている

 

応接室のステンドグラス
太田市教育委員会文化財課
関根 圭介 さん
せきね・けいすけ/1978年太田市生まれ。成蹊大学経済学部卒。2017年4月より現職。

 

きてみて
太田市中島知久平邸地域交流センター/太田市押切町1417/TEL: 0276-52-2235 /月曜休館(休日の場合翌日)・年末年始(12月29日~1月3日)/見学無料

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