意匠凝らした県内最古の木造洋風医院建築
この建物は1912(明治45)年に建てられた和洋折衷の木造洋風医院建築で、もともとは本町通りの南側に建っていました。建物から「明治45年7月11日 今村信四郎之を建つ」と記された棟札がみつかっており、明治末期に築造された県内で最も古い木造洋風医院建築と考えられています。今村氏は代々、伊勢崎藩医を務めた家系で信四郎は1897(明治30)年にこの地で開業しました。その後、明治45年に洋風建築に建て替えたのがこの建物です。
その後、所有者が医師である黒羽根氏に変わりましたが、黒羽根内科医院として1984(昭和59)年まで地域の医療の場として市民に親しまれてきました。2002年、その役目を終えた黒羽根内科医院は市に寄贈され、市重要文化財として指定されました。そして新たな「まち」の拠点として活用すべく、約100㍍曳家移転し現在の地に移ったのです。
この建物の特徴の1つは外観正面の洋風意匠です。中央玄関の両側の壁は翼のようにわずかに張り出した左右対称の構造をしています。また、中央に玄関ポーチを設け、その上部をベランダとし、ベランダ周辺の意匠を特に凝らして記念性を強調しています。これは、明治期の官公庁や学校建築に好んで採用された外観と考えられています。
この洋風の造り、実は正面側の外観と診察室や薬局等に限られています。裏側の外観や客室、寝室などは和風の意匠が採用され、和洋折衷の建物としても際立っています。
2005(平成17)年に愛称が公募され、現在は「いせさき明治館」と呼ばれ、地域の文化的拠点として活用されています。今年で建築110周年を迎え、今月30日まで記念イベントを行っています。この機会にいせさき明治館を訪れ、明治・大正ロマンを味わってみてください。
■きてみて■
いせさき明治館/伊勢崎市曲輪町31-4/ 0270-40-6885 /開館時間午前10時~午後5時/月・火曜(祝日の場合は水曜)休館/入館無料/建築110周年記念イベント開催中。展示(11月30日まで、大正時代をイメージした館内の再現)、銘仙コサージュ作り(19日午後1時~、定員4名、要予約、伊勢崎市観光物産協会 0270-24-5111 )、銘仙お出迎えday(26日のみ、職員が伊勢崎銘仙を着用し案内)