県指定重要文化財 旧上毛モスリン事務所(vol.35)

「衣」の面から人々の暮らし支えた羊毛産業

県指定重要文化財「旧上毛モスリン事務所」外観

近世を通じて江戸の守りの要だった館林城。その跡地に建設された「旧上毛モスリン事務所」には明治以降、「衣」の面から人々の暮らしを支えた歴史が詰まっています。モスリンとは、羊毛などの繊維を糸にした毛織物の一種で、肌着や着物などに幅広く利用されました。

上毛モスリン株式会社はかつて館林の近代化を支えた織物産業で、1909(明治42)年に館林城二の丸跡地に鋸屋根の大規模毛織物工場を建設しました。

この建物は本館事務所で、木造瓦葺2階建ての洋風建造物です。棟札から「明治42年12月19日」に上棟式が行われたことがわかります。和洋折衷の特徴が見られ、日本の伝統的な尺貫法を用いた建築で、天井の立体的な装飾には漆喰が使われています。また、左右対称に作られた美しい洋風の外観に加え、上げ下げ窓や階段の手すり、視覚的に安心感を与えるエンタシス式の柱など、洋風建築発達時の意匠や技法が随所に見られます。

本来は工場とともに解体予定でしたが、市民から保存要望の声もあり、館林の近代産業発展の歴史を伝える建物として、1978(昭和53)年に県重要文化財に指定・保存されました。約300m東へ曳き移転の末、81(昭和56)年に館林市第二資料館として開館しました。

館内には工場の部材や機械、館林製粉 (現・日清製粉)創業者の正田貞一郎が使用した馬車も展示されており、館林の近代化の歴史に触れることができます。今後は、日本遺産「里沼」の情報発信拠点としても活用していく予定です。

市内には他にも洋風建築や武家屋敷など、歴史を感じられる建物が多くあります。ぜひ、街歩きにお越しください。

館林市教育委員会文化振興課文化財係
塚原 未来さん
つかはら・みく/1999年大泉町生まれ。國學院大日本文学科卒。2021年4月、館林市役所入職。同年より現職

きてみて
旧上毛モスリン事務所(館林市第二資料館)
館林市城町2-3/TEL: 0276-74-9665 /開館:午前9時~午後5時(入館は同4時半)/休館:月曜(祝日を除く)、祝日の前日、年末年始/入館無料

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