明治天皇新町行在所(vol.36)

高崎市史跡1991(平成3)年12月7日指定

北陸・東海道巡幸のために新築した天皇の宿泊所

1878年9月2日に明治天皇が宿泊した新町行在所

「行在所」(あんざいしょ)というのは「旅行中の天皇の宿泊所」であり、この建物は明治天皇が1878(明治11)年に行った北陸・東海道巡幸(じゅんこう)の途中で宿泊されるために建てられました。巡幸の際はその土地の名家・旧家に泊まることが一般的で、行在所を新築して天皇をお迎えしたのは全国的にも希少な例と言えます。

建築様式は木造の平屋建てで、御座所(8畳)、次の間(8畳)、控間(8畳・10畳)の4室のほか、浴所と浄所を備え、玄関から畳敷の廊下で各部屋が結ばれていました。現在はその一部が残り、正門からは松やもみじが配された庭園と風情ある佇まいを臨めます。1991年に市指定史跡となり、隣接する広場は行在所公園として整備されています。

明治天皇による97回に及ぶ地方行幸と巡幸のうち、1872~85年にかけての6回は「六大巡幸」と呼ばれています。さらにその中で最大規模のものが北陸・東海道巡幸で、岩倉具視や大隈重信、井上馨といった政府の重鎮をはじめ700人以上が同行しました。近代化を象徴する建物や産業などを視察し、新町行在所に宿泊された翌日には、富岡製糸場と並んで明治の絹糸産業を支えた官営の新町屑糸紡績所(しんまちくずいとぼうせきしょ)(1877年創業、国指定重要文化財・国指定史跡)を巡覧されました。

現在、この新町行在所を中心会場として「新町ひなまつり」が開催されています。周辺の約50店舗に個性豊かな雛人形を展示。歴史ある宿場町の散策をぜひ、お楽しみください。

高崎市教育委員会文化財保護課
設樂 庸平 さん
したら・ようへい/1981年高崎市生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了(教育社会学)。2006年高崎市役所入庁、2020年4月より現職

きてみて
明治天皇新町行在所
高崎市新町2825-1/外観はいつでも見学可・無料/駐車場なし/問い合わせ先: 027-321-1292 (高崎市役所文化財保護課)/3月5日まで「第17回新町ひなまつり」開催中。会場では「雛めぐりマップ」も配布

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