南下古墳群(vol.45)

史跡に指定された県内の貴重な遺跡や古墳などを担当者が紹介

群馬県指定史跡(2023年9月8日指定)

石室内に朱線や漆喰の跡  畿内の高度な技術者集団が築造か

南下古墳群の中で最も大きいA号墳

南下(みなみしも)古墳群は、県道前橋伊香保線の吉岡町役場入口信号を吉岡中学校側に進み、南へ700メートルほど行ったところにある小丘陵に点在しています。A号墳~F号墳と名付けられた6基の古墳の総称で、A~Eまでの5基は1300年以上たった現在でも石室が完存しています。

その5基の中でも7世紀の後半~末に築かれたA号墳とE号墳には、石室の壁に石材加工の際に引かれた赤色作業線(朱線)の跡が残っています。

精巧な切組積(きりくみづみ)で作られたA号墳の石室

また、A号墳の石室は、天井部と壁面上端部の継ぎ目や壁面の窪みに漆喰(しっくい)が塗られた跡も残っていて、築造時には白壁だった可能性があるとみられています。

こうした朱線や漆喰が確認できるのは、前橋市総社古墳群の宝塔山古墳や奈良県明日香村の高松塚古墳など全国に数基しかありません。宝塔山古墳や南下古墳群のA・E号墳の築造には畿内地方から直接派遣された高度な技術を持つ同一技術者集団が関わっていた可能性が極めて高いと考えられています。

南下古墳群には古墳の築造研究に関する貴重な情報が数多く残されており、学術的価値が高いことから昨年9月8日に群馬県の史跡に指定されました。

吉岡町では同古墳群を2009(平成21)年度に公有地化し、南下古墳公園として整備しました。1300年の歴史が感じられる憩いの公園として多くの皆さんに親しまれています。

隣接する文化財センター(文化財事務所)では町の歴史文化に関する展示や古墳の石室内の解説動画などの情報発信を行っていますので、是非お越しください。

吉岡町教育委員会事務局 生涯学習室 文化財センター所長
大澤 弘幸 さん

おおさわ・ひろゆき/1958(昭和33)年、吉岡町生まれ。82年4月、吉岡町役場入庁。2019年4月より現職

きてみて
南下古墳群
吉岡町南下1322番地12
問い合わせ:吉岡町文化財センター(文化財事務所)℡  0279-54-9443
文化財センター
開館時間:午前9時~午後4時/休館:月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始/入館無料
※現在、企画展「昔のよしおか~明治から昭和初期の暮らしがわかる道具~」を開催中

 

 

掲載内容のコピーはできません。