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せんべいや SENBEIYA
清香園代表 三橋 一仁さん(32)
【せんべいや復活】
先月、前橋市本町二丁目にせんべい店「清香園」をオープンしました。「清香園」は、1875(明治8)年の創業以来、せんべいなどの米菓を柱に営業を続けていました。3年前、一度は店を閉めましたが、この度、長年培った自慢の銘菓をそのまま生かして、店をリニューアルしました。
新しい「清香園」では、せんべいを売ることはもちろんですが、それだけではなく、ここで出会った人同士がつながって、文化が生まれる店にしたいと思っています。
【若者は絶滅していなかった】
高校卒業までは前橋で育ちましたが、「早く群馬を出て、東京に行きたい」と思った時期も正直ありました。大卒後、就職した百貨店では、バイヤーとして商品企画やプロモーションなどを担当していました。仕事は順調で充実していたのですが、実家のおばあちゃんの体調が悪くなって、閉店の話が上がっていました。小さい頃から店を切り盛りしていたおばあちゃんに、いつもかわいがってもらっていたので、なおさら寂しかったです。
実は、「前橋では、若者が絶滅している」ぐらいのイメージを抱いていました。ところが、お見舞いに帰ったとき、仲の良い同級生が案内してくれた前橋駅前のけやき並木で行われていたイベントで、街を元気にしようとする同世代の若者と出会いました。「何か新しいことがやれる面白い街」というムードが満ちていてが印象的でした。「ああ、こういう人もいるんだな。自分がこの街でお店をやったら、めちゃくちゃ楽しそうだな」と、店がなくなる寂しさもありましたが、故郷への興味がどんどん膨らんできました。
【新しい文化を波及させたい】
2019年には会社を辞めて、前橋へUターンしました。「地域おこし協力隊」として、地域団体「まちなかエージェンシー」でもお世話になり、活動を通して前橋や群馬の現状や課題を学びました。前橋の力あるプレーヤーと出会い、目の前で「街が良い方向に動いている」ことを実感しました。一方で、新しい動きと一般市民とのギャップを感じることもあり、今度は自分が飛び込む番と分かりました。
次第に「若者やお年寄りも、せんべいを仲立ちにして話ができる空間にしたい」という思いが湧き、店の構想がまとまってきました。店では、古いものも大切にしたいと、以前から使用していた木製のケースや地球瓶を使用。「量り売り」もやっています。レトロなスタイルですが「欲しいものを欲しい分量だけ」購入できるサスティナブルな売り方です。商品は、ゑびす通りに面した店舗にちなんだ鯛の風味を生かしたオリジナル「エビスオカキ」(100㌘340円)など、職人が焼いた15種類のせんべいやあられを用意しました。喫茶スペースを新設し、朝7時半から営業しています。出勤前の時間をお過ごしください。せんべい2種類とお茶やコーヒーの「お茶菓子Set」(500円)や母が考案したおもちにチーズをのせてノリで巻いてある「もっちーずスティック」(午前9時半まで限定20個・200円)も人気があります。
開店の数日前には、施設に入居するおばあちゃんも来てくれて「いい塩梅(あんばい)だよ」と笑顔を見せてくれました。コロナが落ち着いたらイベントや夜の営業もやってみたい。様々な人が関われるコミュニティを作っていきたいですね。 (聞き手・写真 谷 桂)
■清香園 前橋市本町2―8-12
営業は朝7時半から午後1時まで/土日祝日は休み
問い合わせ 同店(027-221-5683)
インスタグラム @seikaen1875