前橋勤務となって初めての夏休み。長野県の実家へ車での帰省を思いつき、実践してみたのだが、想像以上の苦難の道のりだった。
前橋を出たのは8月下旬の午後2時半すぎ。カーナビに実家に近い長野県飯田市の主要住所を入れたところ、表記されたのは「到着まで3時間36分」。意外に近いな、と思い、弾む心でいざ出発。ナビに従い前橋ICから関越自動車道に入り、藤岡JCTで上信越自動車道へ。最初の難所は、群馬と長野の県境、碓氷軽井沢IC近くを走行中のことだった。突然周囲に暗雲が立ちこめ、雷鳴とともに大雨に。ワイパーが効かないほど目の前は真っ白になり、追い越し車線の車の水しぶきで車が埋まる感覚に、恐怖を感じた。トンネルに入るとホっとするが、出ると同時に視界は真っ白……。碓氷軽井沢ICで下車して待機しようと思ったら、空が明るくなり、雨はやんだ。
やれやれ。と思ったのも、つかの間。ナビ通りに佐久小諸JCT~中部横断自動車道経由で佐久南ICで高速を下りると、今度は旧中山道からの峠越えが始まった。曲がりくねった急勾配の山道が延々と続き、対向車線のトラックとものすごい勢いですれ違い、変な汗が流れる。アクセルも踏みっぱなしで、足がつりそうになった。
左側に諏訪湖が見え、岡谷ICから長野道へ、そして中央自動車道で飯田を目指した。実家にたどり着いたのは午後6時50分。周りの景色を楽しむ余裕もない4時間20分の車の旅だった。次からは公共交通機関で、ゆっくり車窓の風景を愛でながら帰省しようと思う。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)