〈人生が壊されるような恐怖感が続き、悲観的になり、幸福感を感じるのが難しい状態になっている〉〈集中困難、焦燥感、無気力といった症状もある。日常的に非常な苦痛を感じることが多い〉
宮内庁が、秋篠宮家の長女眞子さまの結婚予定と合わせて明らかにした複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断結果に、衝撃を受けました。誹謗中傷と感じられる出来事が長期的に反復され、逃れることができない体験をするなど、眞子さまは精神的苦痛を感じていたというのです。
結婚に否定的な報道やコメントに真っ向から反論できない皇室の眞子さまと、お相手へのバッシングやあら探しは度が過ぎる。「母親と元交際相手の金銭トラブル」にしたところで、小室圭さんと母親は別人格。2人のご心労はいかばかりか。
思い浮かべたのは「親ガチャ」という言葉です。「子どもは親や家庭環境を選べない」。それをおもちゃ売り場やソーシャルゲームの「ガチャ」に例える言い回し。親が金持ちならば、あんな毒親でなければ、こうも落ちぶれなかったのに――。嘆きや報われぬ努力を、きれいごとを突き放すように「親ガチャで外れた」などとつぶやくようです。「顔ガチャ」「体ガチャ」「地域ガチャ」「時代ガチャ」……。応用編も増殖中。
出自で運命を決定づけられる点で皇室は「親ガチャ」の極北かもしれません。学歴格差や貧困の拡大、群馬で顕著な世襲政治だって、「親ガチャ」に込められる運不運や諦観と無縁ではなさそうです。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)