私事だが、のり弁が大好きだ。
ランチは基本外食派だったが、上海駐在中、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が長引く中、料理で暮らしにメリハリをつけたいと、お弁当生活を始めたのがきっかけだ。
冷たいごはんを好まない職場の中国人スタッフも、コロナ禍でお弁当派が主流になった。自分で締めた鶏を使ったスープ、上海名物の川ガニの炒め物、塩漬けアヒル肉……。豊富なおかずに、食を大切にする国民性も垣間見え、昼時に職場でお弁当をのぞかせてもらっていた。
私の定番と言えば、白米の上に、のりとおかかを敷き、だし巻き卵、肉野菜炒めをのせる「特製のり弁」だ。料理の腕はさておき、密封式のガラス容器を使うのが私なりのこだわり。のりとおかかを2段に重ねた白米を、おかずと蓋でぎゅうっと圧縮する。のりはしっとり、おかかのうまみも白米にしみこんだ5、6時間後が一番の食べ頃になる。のり弁の日は、お弁当のふたを開ける瞬間が密かな楽しみでもある。
前橋では、まだお弁当生活は始まっていない。もう少し落ち着いたら、またのり弁を作ろうかなと考えながら、昼時会社近くのアーケード商店街を歩いていたら、見つけた。おいしそうな、のり弁を。
のりご飯の上には、甘めの卵焼き、焼き鮭、ちくわ揚げ、チキンカツ、レンコンのきんぴら、さつまいもの甘露煮、そして厚揚げ。肥沃な大地に咲く色とりどりの花々のよう。そして、売っているのはパン屋さんという、不思議。迷わず購入し、すっかりファンになった。昼ご飯の楽しみが、また増えた。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)