師走の月見 [前橋での暮らしの中で、朝に夕に、いつも驚くのは、澄んだ空の美しさだ…]

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前橋での暮らしの中で、朝に夕に、いつも驚くのは、澄んだ空の美しさだ。山の稜線に沿ってオレンジ色が広がっていく朝の空、「抜けるような青空」という言葉がぴったりの昼の空、一番星がきらめき始める夕方の空。何度見ても、毎回スマートフォンを取り出して、ついつい撮影してしまう。

週末、利根川沿いに延びる自転車道をランニングした。平成大橋からスタートして、群馬大橋、中央大橋、大渡橋をくぐり、折り返して平成大橋まで。そこでゴールのつもりが、頭上に広がる空があまりにきれいで、そのまま前橋駅までコースを延長して走り続けた。空を見上げながらのランニングは、とにかく気持ちよかった。

約10キロ、1時間の前橋初ランニングを終えて家に帰る頃には、日もとっぷり暮れていた。小さな路地を足早に歩いていると、優しい声が聞こえてきた。「満月ですよ。きれいですねえ」。目をあげると、路地脇のクリーニング店の店先で、高齢の女性がにこにこしながら私の後ろの空を見上げている。つられて振り返ると、ぽっかり、大きなまん丸の月が浮かんでいた。

「あんまりきれいだから、お月見してるんです」。その言葉に私も足を止めて、2人並んで、しばし師走の空に輝くお月様を眺めた。「家までお気をつけて」、そう声をかけてもらい、月に背中を押されて家に帰った。澄んだ空のおかげで、気持ちも温かくなるお月見ができた。

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

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