新型コロナウイルスの感染拡大がこれまでにない速度で進む中、気持ちの晴れない日々が続く1月。そんな中、明るいニュースとして注目されたのが、東京・上野動物園の双子のジャイアントパンダ「シャオシャオ」と「レイレイ」の初公開だ。コロナの感染拡大で園は休園となったが、パンダだけは12日から3日間、抽選の当選者限定で公開された。
上野動物園に初めてパンダがやってきたのは、1972年10月。日中国交正常化の象徴としてカンカンとランランがやってきたのが始まりだ。今年は上野にパンダがやってきて50年、日中国交正常化からも半世紀となる節目の年といえる。
パンダを見る度に、思い出すことがある。中国在任中、内陸部に位置する四川省の省都・成都に何度も出張した。魏・呉・蜀が覇権を争った三国時代、蜀の都だった成都は古くから豊かな歴史を刻んできた街だ。ジャイアントパンダの生息地があることでも有名で、世界最大規模の人工飼育施設「成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地」も抱える。研究基地は一般公開されており、パンダを間近に見られるとあって絶大な人気を誇る観光地だ。
そこで見た「パンダの一日」のスケジュール表の衝撃は今も忘れられない。一日を示す円グラフに書かれた項目は「睡眠」「食事」「遊び」の三つのみ。パンダを見るとなぜか癒やされる理由の一つは、こういう暮らしへの憧れもあるのかも知れないな。パンダを見る度、この円グラフを思い出して笑顔になってしまう。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)