ショーケースいっぱいにあふれる色彩の豊かさに、圧倒された「七福田舎巻」「やわらかヒレカツソース巻」「ホッキサラダ巻」「アボカドローストビーフ巻」「特上海鮮巻」「三種のまぐろ太巻」……。2月3日の節分。前橋市内のスーパーの総菜売り場は「恵方巻き」一色になっていた。
節分に縁起の良い方向「恵方」を向いて太巻きを一本丸かじりすると福が訪れる。豆まき一辺倒だった節分に、いつの間にか恵方巻きが加わって、もうしばらく経つように思う。今年は久しぶりに丸かじりをしてみよう。そんな思いで、新聞に折り込まれているスーパーのチラシを見て、太巻きの進化ぶりに驚いた。
長野の実家で母が作る太巻きの具と言えば、かんぴょう、しいたけ、卵焼き、紅ショウガ、緑のものは、季節によってはキュウリだったり、ほうれん草だったり、野沢菜の漬けものだったり。それが……。手元にあった五つのチラシを見比べて分析したところ、今の太巻きの主力は断然、海鮮らしい。マグロがはみ出ていたり、ウニやイクラ、カニといった高級食材をふんだんに巻き込んだり。値段も300円台から3千円近いものまで。吟味に吟味を重ね、今年の恵方巻きに選んだのは、「ハーフサイズセット(3本入り)」。中身は、ねぎまぐろ巻、ホッキサラダ巻、そして昔ながらのかんぴょうとしいたけと卵焼きの太巻き。
恵方は北北西。スマートフォンの方位磁石アプリで方角を確かめて、一口。3本分、あれこれとお願い事をしてみた。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)