いつ行っても、そこにある [前橋で暮らすようになって、半年が過ぎた…]

前橋で暮らすようになって、半年が過ぎた。冬から春、初夏と季節が変わる中、毎回ワクワクする場所は、スーパーの野菜売り場だ。レタス、アスパラ、オクラ、ミョウガに大葉、トマト……。いつ行っても新鮮で瑞々しい色鮮やかな季節の地場産野菜が山と積まれているコーナーは、見ほれてしまう。

次は無いかも、と不安に思うことなく
満喫している季節の味

この「いつ行っても」欲しいものが買える安心感が馴染んできたのか、最近、ようやく「買いだめ」をする習慣から脱却できたことに気付いた。

中国・上海での生活で身についたのは「今買わないと、次は無い」という自己防衛策だ。各地で急速な都市再開発が進む中国では、新鮮で安全な野菜を買える行きつけのスーパーや個人商店がある日突然閉店し、あっという間に取り壊されることが日常だった。前の日まで桃が山のように店頭に並び、人だかりができていた小さな果物店が翌日には取り壊され、がれきしか残ってなかった時は、ショックだった。

そんな日々の中で、中国の人たちが「爆買い」する心理が徐々に理解できた。お金があるから、だけではなく「欲しいものは目の前にあるときに手に入れないと無くなってしまう」という意識が根底にあると思う。

帰国後もついつい多めに買ってしまう癖がなかなか抜けなかった。今は「いつ行っても、そこにある」安心感から、季節の味をその時に食べられるだけを買い、新鮮なうちに味わっている。そんな暮らしの豊かさを実感している。

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

掲載内容のコピーはできません。