いつもより早い梅雨入りとなった6月。しとしとと雨に降られながらスーパーに立ち寄る度、梅干し用のコーナーが日に日に拡大していくのが、ずっと気になっていた。
1㌔ごとにパックに詰められた南高梅は青みが薄くなって黄色からほのかな紅色に変わり、前を歩くとなんとも言えない優しい匂いが漂っている。隣には赤ジソや梅酢、あら塩の袋に氷砂糖、そして漬けもの容器がずらり。売り場の前には「天然しそ漬けの作り方」「梅酒の作り方」と、レシピが書かれた紙も添えられている……。
ここまで素晴らしい材料と環境が目の前に整っている今、チャレンジしない選択肢は、ない。
人生初めての梅干し作りへの挑戦を決め、梅とガラス容器と塩を手に、レジへと向かった
長野県の実家では、自家製の梅干しや味噌、野沢菜が日常的に食卓に並んでいたが、作り方は恥ずかしながら全く知らないことに気付いた。「うちはちょうど今日漬けたところだよ」と言う母から、電話口で梅干し作りの詳細を聞き取った。
我が家の小梅の梅干しは塩や食酢、砂糖を入れていたと、初めて知った。「梅が緑色になるくらい塩でごしごし揉み込むのが大事」など、メモを取っているだけで口の中が酸っぱくなっていく。
どんな梅干しができるのか、ワクワクしながら初めての梅仕事が始まった。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)