今年の9月10日は、久しぶりに名月を堪能した。旧暦の8月15日のこの日。前橋市内でも雲の合間から「中秋の名月」が顔を出した。月明かりのもと、3年ぶりの開催となる「前橋バルストリート」でにぎわう駅前の通りをそぞろ歩きし、初秋の夜の空気を満喫した。
中国でも同じように名月を楽しむ風習があり、この日は「中秋節」という祝日になる。家族団欒で過ごす日とされ、旧正月、端午の節句と並ぶ「三大節句」の一つに数えられている。
中秋節に欠かせないものと言えば「月餅」だ。上海駐在時代は、この時期になるとお中元のように友人や知人に月餅を贈るのが習わしだった。伝統的なこしあんやくるみなどが入ったものから、ハーゲンダッツやスターバックスが販売する「洋風月餅」まで、様々な種類の月餅が並び、見るだけでも楽しかったが、互いに贈り合うので、消費するのが一苦労だったのを思い出す。
そして毎年話題になるのが、超豪華な月餅セットだ。企業間での贈り物として、自社の景気の良さをPRしようと「住宅付き月餅」や「高級仏像付き月餅」などが登場していた。だが、今年は中国政府が「豪華な月餅は自粛」とし、500元(約1万円)を超える場合は厳しい調査が入るようになったという。
そんな月餅商戦に思いも馳せながら、大福を買って帰宅。スズムシの音色に包まれながら、ゆっくりと月見気分を楽しんだ。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)