スポーツの秋、あちこち走って群馬の実りの季節を満喫したい、と先月の総局長日記で書かせてもらった。先日、早速五感で秋を味わう時間を持つことができた。
ランニングの集合場所は、藤岡市・みかぼみらい館。小高い丘に藤棚が整備された公園「ふじの咲く丘」で、丘を吹き抜ける風を利用して音が鳴るモニュメントが奏でる澄んだ音色が聞こえてきた。風に包まれながら、群馬百名山の一つ「庚申山」の山頂に続く山道へ。整備された登山道では多くの人とすれ違い、あいさつを交わしながら登っていく。脇を見ると、キノコに混じって栗の実やドングリがあちこちに落ちている。思わずしゃがみこんで、帽子がついたドングリを手に取った。懐かしい手触りに学校帰りに友達とドングリを探した子どもの頃を思い出した。
頂上の展望台に立つと、目の前の視界が一気に開けた。遠くに県庁が見え、その後ろには赤城山の広大な裾野が広がる。坂を下って鎌倉街道を目指す。柿の実のオレンジ色や稲穂の黄金色に彩られた豊かな里山の道を軽快に走っていく。イチョウの大木が並ぶ小道で上を見上げると、ツタが絡まりカラフルな実をつけた「カラスウリ」が垂れ下がっていて、心が浮き立った。
神流川沿いに伸びるサイクリングロードを走っていると稲の香りに混じってキンモクセイの華やかな匂いも漂ってきた。
贅沢なコースを満喫し、たっぷり走った後の車で食べた新米のおにぎりと、帰宅後に開けた缶ビールの味は格別だった。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)