群馬での生活ももうすぐ1年半。振り返ってみると、季節ごとに「人生初」の経験やチャレンジを楽しんできた。去年は梅干し作りに、鳩との格闘、発酵白菜作りにもハマった。この週末は新たな「初挑戦」を存分に満喫した。
挑戦のテーマは「生筍からタケノコ料理を作る」だ。スーパーに行くと、ピカピカの生筍がずらりと並んでいる。見るたびに生筍ならではシャキシャキの歯ごたえを思い浮かべて、うずうずしていた。生筍を味わえる季節は短い。決行日を週末に定め、実家の母やネット上で筍のゆで方を事前に習い、イメージトレーニングを積んでおいた。
朝一番にスーパーに行き、みっちり身が詰まっていそうなものを選んだ。台所で取り出してみると、春を体現している立派な風情にしばしみとれた。根元と穂先を格闘しながら切り落とし、鍋へ。だが、単身赴任の我が家には小さい鍋しかなく入りきらない。半分に切って二つの鍋に小分けして、落としぶたをして1時間ほどコトコト。冷えた鍋からそっと取り出し、水洗いしながら皮をそっとむいていくと、つるつるの筍の肌が見えてきた。そのまま切って一切れ食べると、口の中に甘くやさしい野の味がひろがり、何とも言えない幸せな気分になった。
筍ごはんにお味噌汁に若竹煮にと、あれこれ作ったらあっという間に1本なくなり、次の日を待ちかねて新しく3本買いに出かけた。おいしい旬のものが身近に手頃な値段で楽しめる群馬ならではの贅沢。しばらくは筍三昧の日々を過ごせそうだ。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)