上海の友人からSNSで連絡が来た。コロナによる渡航規制が緩和される中「今年は母親と一緒に日本に行く計画を立てている」という。どこを観光するのかと聞いたら、目的は「体検(人間ドッグ)!」と即答された。コロナ禍前、中国では医療と観光をセットに外国へ行く「医療ツーリズム」が一大ブームだった。特に日本の人間ドッグは人気で、医療機関でのきめ細かな検査や対応と、検査後の温泉や料理を楽しみに、浮き浮きと旅立っていく友人たちを見送ったことを思い出した。観光地に外国人観光客が戻り始めたと思っていたが、医療の現場にもインバウンドが本格的に復活していくのだな、と感じた。
上海で暮らした3年間、やはり困るのは病院だった。国際都市だけに外国人対応の病院は多くあるが、医療水準は様々。頼りになるのは口コミで、駐在歴の長い知人や上海の友達にあれこれ聞いて、病院探しをしたのを思い出す。
今でも思い出すのが、上海で受けた人間ドッグだ。中国人スタッフたちは、とにかく正直。腹部の超音波検査では、最初はニコニコしながら「没問題(大丈夫だよ)!」と言っていたのに、突然無言になり、モニターを見る表情が曇り始める。他の検査中にも「アイヤー」という感嘆詞がやたらと漏れる。今思うと微笑ましいエピソードだが、当時は心配でたまらなくなった。「身体健康(お元気で)!」と言ってくれた女性医師の笑顔を思い浮かべると「今年も健康診断を受けねば」という気持ちになる。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)