初めて尾瀬に足を踏み入れたのは、2022年2月下旬。一面の雪景色、静寂な中にも垣間見える生き物たちの暮らしと、木々の芽吹きの息づかいに、感動の連続だった。そのときの思いは、この総局長日記の欄で上中下の3回にわたって書かせていただいた。
5月下旬、それ以来の尾瀬再訪が実現した。今回も尾瀬の自然保護を考える会・解説ガイドの杉原勇逸さんに案内をお願いし、早春の尾瀬を存分に味わうことができた。
5月24日午前6時半。「下界」は夏日も続いていたが、目指す尾瀬は山岳地帯。事前に杉原さんから指定されていた装具(雨具、帽子、飲料水、昼食、副食)のほか、カメラと防寒着をリュックに詰め、トレッキング靴のひもを締め、緊張とワクワクが入り交じった思いで、集合場所の片品村の道の駅に到着した。空を見ると、灰色の雲が尾瀬の山々に立ちこめている。まずは戸倉の駐車場へ向かい、乗り合いバスで尾瀬ケ原の玄関口・鳩待峠を目指す。
朝7時の乗り合いバスは満席。山登りの装備万全な人から、少々心もとない人まで、それぞれが地図を広げたり本を読んだり、スマホをみたり。少し眠たげな車内の空気を味わいながら車窓を見ると濃淡様々な緑色に目を奪われた。
30分足らずで鳩待峠に到着。バスを降りると寒さに震えた。空からは白いみぞれ混じりの雨が。リュックからダウンと雨具と手袋を取り出して装着。2度目の尾瀬、いよいよスタートだ。
(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)