帰省の車窓から [9月上旬、遅めの夏休みをとって長野県の実家に帰省した…]

9月上旬、遅めの夏休みをとって長野県の実家に帰省した。去年は前橋からマイカーを運転し、高速道路でゲリラ豪雨に遭って生きた心地がしなかった経験をこの欄でも書かせてもらった。その教訓から、今年は公共交通機関を使って、のんびり帰省することにした。

道のりはそれなりに長い。まずは電車と新幹線で前橋から長野駅を目指し、そこから高速バスに乗り、終点の実家最寄りのバス停留所まで3時間のバスの旅となる。学生時代から帰省といえば高速バスだったので、バス旅は慣れたもの。今は座席シートが広く、ふかふかなバスも多く、かなり快適な旅の時間を過ごせる。何より楽しみなのは、大きな窓から見える道路沿いの風景だ。

今の季節は、収穫を控えた稲穂がゆれる黄金色の田んぼが連なる景色が続き、いつまでも見飽きない。長野道から中央道に入ると、見慣れた山々が見えてきて、なんとなく安心する。南アルプスと中央アルプスに囲まれた伊那谷は、右を向いても左を向いても山脈が連なり、天竜川の河岸段丘には果樹園が続く。中央道の下に続く段丘の景色を見ながら、関東平野が広がる前橋の風景との違いを改めて感じる。

去年は運転に必死で、こんな景色をゆっくり味わうこともできなかった。行き帰りのバスの窓からふるさとの風景を堪能することも、帰省の楽しみの一つだな、と発見した。

バスの車窓越しに撮影した1枚。伊那谷はすっかり秋の空

(朝日新聞社前橋総局長 宮嶋 加菜子)

掲載内容のコピーはできません。