「ワクチン供給量が不足」「選手団の一人が行方不明」「選手村に滞在する選手が陽性」「大会関係者が外飲み」。驚き、あきれるニュースばかりが飛び交う中、東京五輪が開幕します。復興五輪? コンパクトでエコロジカルな大会?
中止を求める世論が高まり、5月から7月にかけて有観客の「上限1万人」「5千人」、そして「無観客」の間で揺れ動きました。政府と東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)による5者協議で首都圏1都3県が「無観客」と決まったのは今月8日のこと。
同じ8日、政府が都に12日から8月22日まで4回目の緊急事態宣言を出すと決め、開催地は外出自粛を求めながら五輪は強行する形に。「たとえ無観客でも感動を世界に届ける。難局を乗り越えられると発信することに意義がある」。菅義偉首相は強調します。
8日夜には西村康稔経済再生担当相が、酒類の提供停止要請に応じない都内の飲食店に対して、金融機関を通じて順守の働きかけを行ってもらうと発言。卸業者を含む酒類販売事業者にも「取引を行わないよう要請したい」。強権発動の姿勢に反発の声が強まり、金融機関への要請と酒類販売業者への取引停止の依頼も撤回することに。
いったい誰のための政治、何のための五輪なのか。いらだちや徒労感が募ります。不安と戦いながら調整を続けてきた国内外の選手たちには、最大限のパフォーマンスを発揮してほしいのですが……。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)