新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる中、東京五輪が閉幕しました。無観客、酷暑、選手たちの選手村からの外出は競技場や練習場などに限定……。異例ずくめの17日間でした。
アスリートたちの晴れ舞台を画面越しに手に汗握りながら見守り、一喜一憂し、勇気や感動をもらった方も多いと思います。一方、「五輪どころではない」と感染状況に危機感を募らせる方も。期間中の6日に国内感染者が100万人を超え、世界では5日(日本時間)に2億人を超えました。
「国民の命と健康を守るという前提は守られているか」と問われた菅義偉首相は、ワクチン効果に多くの説明時間を割く一方、五輪には、交通規制やテレワークの効果で歓楽街の人の流れが減少傾向にあるとし、「自宅でテレビなどを通じて声援を送ってほしい」と短く触れただけ。東京都の小池百合子知事も「五輪の視聴率は20%を超え、ステイホームに一役買っている」。
そんな2人に、国際オリンピック委員会(IOC)は五輪精神の普及、発展への貢献をたたえる功労章「五輪オーダー」で最高位の金章を「例外的に」授与すると決めました。市民感覚とかけ離れた悪い冗談のような気もします。
政府は入院拒否者への罰則をゴリ押しで新設したはず。なのに病床が埋まりつつある都内では「入院制限」が現実的になり、中等症患者も自宅療養に回る不安が高まっています。案の定、カオスと分断を招いた祭りのあとには、先送りしてきた壮大なツケが待っているのでしょうか。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)