9月の自民党総裁選で選ばれたばかりの岸田文雄首相を「選挙の顔」にすげ替えたのが奏功し、自公政権の続投が決まった衆院選。解散から投開票まで17日間という戦後最短の慌ただしい日程の中、与野党ともに財源不明の「ばらまき論」に終始したようにも感じます。
ふたを開ければ自公が議席を減らしながらも絶対安定多数(261議席)を超える293議席を確保。野党共闘で攻勢をかけた立憲民主党は96議席と100議席割れ。日本維新の会が公示前勢力(11議席)から4倍近い41議席と躍進――。
自民圧勝となった群馬では、与党対決と野党対決が複雑に絡み合い、「足の引っ張り合い」「敵は誰?」みたいな構図になった選挙区もあるなど、わかりにくく、選びにくかった。
「国民は何にも増して現状維持を望んだ」。そう分析するのは、昭和史に詳しいノンフィクション作家の保阪正康さんです。「いくらばらまくよというのは政治ではないし、有権者を侮辱しているとしか思えません。一時の救いではなく、この国をどこに持っていくかという不安に答えるのが、政治の役割」。
全国の選挙区から、高校と大学の友人3人も当選しました。1人は自民4選目(「魔の3回生」?)。1人は民主元職で果敢に無所属で返り咲き。1人はこれまた返り咲いた維新元職。立ち位置はバラバラながら、「国のあり方」や「困っている人が困らないようにする」政策について、太い筋の通った哲理を持って、「選良」の美称に恥じぬように立法府で議論を深めてほしい。
(朝日新聞社前橋総局長 本田 直人)